ソーシャルメディアにおけるデータプライバシー、人類学データ、そして認知的負荷

2020年3月10日

ソーシャルメディアは、いつの間にか複雑な広告マシンへと進化し、マーケターも消費者もいまだにその使い方を学んでいる状況です。そんな中、最近はデータプライバシー、透明性、大量のコンテンツを吸収する脳の機能に関する論議が巻き起こっており、広告主たちはソーシャルメディア戦略について見直さなければならなくなっています。もともとビッグデータはソーシャルメディア戦略の最前線にありました。しかしデータプライバシーが消費者の最優先事項となった今、BtoBマーケターは、人類学データや認知的負荷について学ばなければなりません。オーディエンスの心に響く、さらに短期間でブランド想起率を上げることのできるソーシャルエクスペリエンスを作るためです。アメリカでは、ソーシャルメディアマーケティングに関してデータプライバシー、人類学データ、そして認知的負荷がキーワードになっています。

データプライバシー

データプライバシーについては、アメリカでは毎日ニュースになっています。Pew Research Centerによると、アメリカ人の64%は大規模なデータ漏洩の被害にあったことがあるということです。現在ではほとんどの国がデータ保護の措置を取っていますが、調査の結果、アメリカ人の約半分は連邦政府や大手ソーシャルメディアのプラットフォームを信用していないことが分かりました。

Facebookなどのプラットフォームに対する信頼が低下したことにより、プラットフォームだけでなく法律も大幅改正されています。ユーザーは、「何故自分たちが広告のターゲットにされるのか」、「自分たちのデータはどこに行くのか」、また「誰がそのデータを所有しているのか」を知りたがっています。その結果、広告を非表示にする機能や設定を変更する機能を提供し、広告主やデータ漏洩からできるだけユーザーを守るようにしています。つまりマーケティング会社も、ターゲットオーディエンスを決定する際に個人データを利用する方法について、責任を負うとともにこれを公開していかなければなりません。

無数にあるアメリカの会社及びエージェンシーは、ベストプラクティスに透明性という要素を入れるためにコミュニケーション戦略の調整をしなければならなくなりました。しかしこのデータプライバシーへの要求に応えることで、消費者はターゲットにされないようにサービスを解約するかもしれないという不安も出てきます。「自分のクライアントの業績を何故わざわざ台無しにするのか?」という疑問がわくのはもっともです。しかし「消費者と簡単につながることができる」プラットフォームでは、その期待に対するニーズがかなり高いのです。

そこでコミュニケーション戦略において透明性を確立させるためのヒントをいくつかご紹介します。

  • マーケティング戦略だけでなく、事業戦略自体に透明性を取り入れる
  • ソーシャルリスニングを使ってターゲットオーディエンスが、自社ブランドに限らず何について語っているかを理解する。
  • 透明性を事業戦略の中心に位置づける

人類学データ

「広告は、消費者に『こういう風に考えましょう』と伝えるよりも、その意味について『自分自身で考えることができる』ようにした方が効果的です。自分を理解しようとすることで参加してもらうのです」

(1998年 Jon Steel)

定量的データが現代の広告には不可欠要素であるという点を否定する気はありません。しかし、「消費者体験を総体的に理解する」という点が制限されていませんか?マーケティング及び広告の変革においては、定量的データのアプローチよりも消費者中心のアプローチが求められています。人類学データを取り入れることができるアプローチです。人類学データは、消費者が生活の中でブランドをどのように使用しているかを示す消費者の声やイメージを具体化するために使用され、その結果、使用しているブランドや商品から消費者がどのように満足を得るのかについて、色々なレベルから理解できるようになります。

マーケティングや広告の新しいアプローチは、会話を継続させ、一方通行にならない関係を築きながら、消費者の生活に付加価値を与えることにフォーカスします。今は、製品を消費者に強く薦めるよりも、ブランドと消費者との相互関係の中に入ってもらう方が成功する確率が高いのです。インフルエンサーによるマーケティングが成功しているのはそのせいかもしれません。消費者は、マーケティング活動の中の代表者であると感じたいのです。そしてその代表者は、彼らがどういう人なのかをきちんと理解していなければ見つからず、定量的データからは見つかりません。

当然ながら、このアプローチは、消費者理解だけでなく、消費者との関係構築を重視しています。そのため会社は、これまでよりも自社の広告や製品品質に対する透明性を確保しなければなりません。近年では、会社自体の透明性が消費者に求められており、これが製品の選定を左右します。従来のマーケティング活動では、消費者の行動を見落としがちでしたが、人類学者は、消費者の行動からうかがえる全体的な視点や意味を提供することができます。

つまり、ターゲットオーディエンスを開拓しながら人類学データを活用するということは、消費者の生活に関する徹底調査ができるだけでなく、会社と消費者との関係を強くし、消費者体験を360度把握できるのです。

認知的負荷

業界全般において、私たちマーケターは、自らの創造性に関しては自信を持っています。シンプルな仕事ではありませんし、広告主もシンプルなものは望みません。しかし、私たちがとても良いと思う広告のほとんどは、そのブランド想起率が低いというデータがあります。そのため私たちは常に「この広告は現実世界でも効果があるのか?」いう厳しい問いに向き合わなければなりません。実際のところ、創造性というものは全員共通ではありません。ただし調査の結果、認知的負荷の低い広告は、ブランド想起率が高いということが分かっています。

HeyHumanの脳科学チームは、脳のモニタリング技術を活用し、近年高く評価されている6つの広告について調査を行いました。Appleの「1984」、「Unlock」、「Welcome Home」、Sony Braviaの「Balls」、「Paint」、そしてPlayStationの「Double Life」です。

このチームの分析によると、20人の参加者のうちの半分は、Sony Braviaの広告「Balls」を以前見たことがあると答えましたが、ブランド名を想起できたのはそのうちのわずか9%でした。一方PlayStationの広告「Double Life」については、参加者の14%のみが以前見たことがあると答えましたが、そのうちの33%は「PlayStation」というブランド名を正しく想起できました。ここで重要なのは、「Double Life」は認知的負荷が最も低く、逆に「Balls」は最も高いということです。シンプルで心のこもったメッセージを届ける広告は、ブランド想起率という点では効果が高いのです。

私たちは、エンゲージメントとモチベーションを重要な業績評価の指標として認識していますが、認知的負荷によって、ブランドのメッセージと広告がどのくらい連動しているかを測定することができます。何が起きているかを人間の脳の中で理解してもらうことは、ブランドにとっては絶好のチャンスです。例えば、Facebookは、Instagramに比べて認知的には弱いことが分かっています。そのため、Facebookのコンテンツは、他のプラットフォームとは全く違うものにすべきです。このように人間のパターンに注意を払うことで、エンゲージメント率を上げ、消費者にとって価値のあるコンテンツを作ることができるのです。

これはインパクトMが所属するBBNのBuzz Magazineの記事を翻訳し掲載しているものです。

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