COVID-19に関するメディア報道からマーケターは何を学べるのか?

相手に臨んだ行動をしてもらうことについては、マーケターはいつも苦労する。新型コロナウイルス感染報道におけるメディアもまた、国民にとってほしい行動があった。それは、マーケティングにおけるファネルに当てはめて考えてみると、示唆に富むものであった。

以下、本人の承諾を得て、Interrupt Media会社創設者兼CEOの Ben Lack氏の考察を紹介する。

新型コロナウイルス感染症ニュースの報道から、見込み顧客を優良顧客に変える方法を学ぶことができる。

我々の多くが、見込み客が商品やサービスを買うように誘導することに苦闘しているが、メディアは、コロナウイルスに関して印象的な操作をすることで、視聴者を上手にコントロールしてきた。

ほんの数週間で、アメリカ人はCOVID-19について何も知らない状態から行動するようになった。ウイルスの蔓延を遅らせるために自分自身を犠牲にしてまで奮闘した医療従事者の皆さんには頭が下がるばかりだ。賛否両論あるものの、メディアの凄さは、多くのマーケターが習得するのに苦しんでいるさまざまなテクニックを用いて、視聴者に影響を与えているという点にある。

このことは、良くも悪くも視聴者の立場に立って考える能力がいかに発達しているかを示している。つまり、さまざまな顧客を行動させるために必須な能力だ。次に、メディアは論調を一変させ、自分たちが欲しい解答を得ることに焦点を当てたのだ。つまり、典型的なマーケターがやっていることと同じことである(編集部注:メディアの偏向報道についてのさまざまな意見やその是非はここでは横に置いておくこととする)。

メディアはCOVID-19に関する反応を短時間で変えることに成功している。国民全体が望ましい行動をとるように誘導させた危機を煽る報道は、マーケターにとっても参考となる(編集部注:見込み顧客の危機感を煽る、いわゆる「ホラーストーリー」だ)。

COVID-19に関するメディア報道から、見込み客を優良顧客に変える方法

ステップ1:教育(トップオブファネル)

COVID-19が世界的なパンデミックになるということを報道することで、COVID-19の認知を広げることがメディアの最初の目的であった。COVID-19について知っている人はほとんどいなかった。だからこそ、国民に知らせる必要があった。ゆえに、早期の段階では、「コロナウイルスとは?」、「COVID-19は季節性インフルエンザとどう違うのですか?」、「どうすれば感染を避けることができますか?」などの基礎的な質問を交えた報道をしたのだ。

同様に、マーケターが、クライアントあるいはソートリーダーとしての立場になってメッセージを打ち出すとき、まずはターゲットに何を教えたいかを正確に知る必要がある。そうなると、初期段階では、主に啓蒙目的の教育的なコンテンツになる。つまり、自分たちの商品やサービスが顧客の問題の解決に役立つということを知ってもらう必要があるのだ。

出典:Vox,2020年5月29日

アメリカ人の多くは当初、COVID-19が人間に害を及ぼすのか懐疑的な見方を示していた。その結果、国内初の症例が発生してから数週間以内に予防策を講じた人はほとんどいなかった。

この懐疑論に対抗するために、メディアは警告を発し、イタリアや他の国々がウイルスによって壊滅的な被害を受けていると報道した。そして、アメリカも広範囲にわたる苦痛と死を経験する可能性があるというメッセージを打ち出したのだ。しかし、メディアへの信頼が非常に低いため、多くのアメリカ人が動じなかった。

そのため、メディアは、アーリーアダプターに頼ることで信頼を築こうと努めた。つまり、メディアが奨励する行動(手洗い、ソーシャルディスタンス)をすでに行っている人々を報道し始めたのだ。さらに、ジャーナリストは、これらアーリーアダプターの行動がいかに新型であるCOVID-19の蔓延を防いでいるかを説明した。

早期に情報を受け取り、行動を転換する人々が、他者への認知やブランディングのためのキャンペーンに大いに役立つということを、メディアはマーケターと同様に知っているのだ。

出典:CNN,2020年5月29日

ステップ2:数値と専門家の利用(ミドルファネル)

COVID-19に対する認識は、人々にソーシャルディスタンスを促すほど十分ではなかった。ゆえに、メディアは、より説得力のある恐怖心を煽るメッセージを打ち出すことにした。

すなわち、個人や集団に対してウイルスが与える影響を報道したのだ。

世界保健機関(WHO)が3月11日にCOVID-19をパンデミックと宣言すると、メディアはその取り組みを積極的に活発化させた。コロナウイルス関連のコンテンツは現在、専門家(医師、教授、専門家、ソートリーダー)と権威者(市長、知事、保険福祉省)からのウイルス関連の事実、数字、意見に焦点を当てている。これらの意見を強めるために、報道機関は、ウイルスの蔓延と影響についての統計的データを提示した。彼らの目的は、COVID-19の潮流を食い止めるために推奨される行動を取るよう視聴者を説得することである。

週半ばの見出しを見ると、メディアが視聴者に予防措置を講じさせるために、数値と専門家を利用すると、視聴者がメディアに影響され行動することが分かる。そして、政府はCOVID-19に対してさまざまな対策を講じるようになった。アメリカは企業と国民に緊急事態宣言とロックダウンを宣言し、在宅勤務を命じたのだ。

同様に、マーケターが自社の商品やサービスの必要性をターゲットに理解させると、次のステップは、専門家やインフルエンサーを利用してその商品の信頼性を上げることである。

マーケティングの目標は、常に行動を促すことである。自社の商品の認知や理解がうまくいかない場合には、統計的データや専門家を利用して、自社のブランディングを行う必要がある。

もちろん、この戦略を慎重に練らなければならない。メッセージ性が強すぎると、顧客は無視あるいは、完全に拒否する可能性がある。また、メッセージ性が弱すぎると、緊急性が伝わらない可能性がある。

ステップ3:証明とケーススタディ(ボトムオブファネル)

伝えたい要点を強調するために、実話よりもうまくいくものはない。そのため、記者は頻繁に、リアルな人々の体験を、統計的データを用いて説明する。人々は、その話を脳裏に刻みこむのだ。ここで重要なのは、人々にとって、実話が最も説得力があるということだ。

パンデミックに関する初期の報告では、パンデミックは危険であると説明されていたが、高齢者がはるかに高い死亡リスクに直面していることを示していた。そのため、2020年の春休みには、いつものように若者がフロリダのビーチに集まった。若者はCOVID-19に罹る可能性をすっかり忘れていたのだ。しかし、その後多くの若者が命を落とした。

出典:CBS News,2020年5月29日

数週間以内に、フロリダなどパンデミックの影響が及ばないと考えられていた他の州では、感染率が急上昇した。その結果、アメリカは世界で最も症例数の多い国になってしまった。メディアがこれらの統計的データを報告するにつれ、予防措置の義務化を遅らせていた多くの州が対策を講じ始めた。

行動科学は、なぜ実話が人々を動かすのかを説明する。私たちは生来、「群れ」の考え方を持っている。つまり、仲間に行動で示すことが最も説得力のあることなのだ。たとえば、COVID-19の拡散を避けるために、人々が家にいるという話をすることで、私たちは同様の行動をするのである。

実話、ユースケース、ケーススタディによって、同様にマーケティングメッセージも強めることができる。これらはとどめの一撃という役割を果たす。ターゲットとする顧客に自社の商品やサービスを買わせることがカスタマージャーニーの終点である。つまり、自社のブランド、商品、サービスを顧客に知ってもらうまでの正しい道のりを一歩一歩示す必要があるのだ。

本記事はインパクトMが著者の許可のもと、Interrupt MediaのCEO、Ben Lackの記事を翻訳し掲載しているものです。


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