アカウントベースドマーケティング(ABM)で忘れてはいけない5つのポイント

2019年9月12日

BtoBマーケターは、インバウンドマーケティングが誕生して以来最大の転換期を迎えています。転換先はアカウントベースドマーケティング(以下「ABM」)です。この用語をご存じない方のために、広告の父と呼ばれるDavid Ogilvyの言葉を引用すると、ABMの基本原則は、「こちらからアプローチする人を見込み客としてカウントするのではなく、見込み客としてカウントできる人にアプローチする」ということです。

最近、ある中小企業のCEOからアプローチを受けました。彼は、マーケティングチームが毎日出してくる「リード情報」に対し、不満を感じていました。理由はお分かりでしょうか?営業チームがこれらのリードを獲得・契約につなげていなかったからです(もしかして似たような経験がありますか?)。

これでは貴重なリソースをほとんど活用せずに消費しているだけだということに気付いたCEOは、我が社に対し、営業とマーケティングの手法を変更するよう依頼してきました。これまでよりも大幅にレベルアップした集中的かつ目標指向型アプローチに変更し、顧客リストのターゲットをさらに明確にし、その結果営業チームとマーケティングチームが同じ目標に向かって足並みをそろえることができるようにしたいとのことでした。

要するに、彼が求めているのはABMでした。そして私たちは、CMO(最高マーケティング責任者)と密接に連携することで、まさにABMを実行するための大規模なビジネス変革プロジェクトを開始したのです。

この6カ月プロジェクトが始まったこともあり、ABM変革を提供する我が社のようなエージェンシーにとっては非常に重要な運用における課題を皆さんと共有しておこうと思いました。

これらのポイントをすべてクリアしても(実際にはもっとあるので)成功を保証することはできませんが、クリアしていなければプロジェクトは間違いなく失敗します。ではポイントをひとつずつ解説していきます。

1) 営業チームを引き入れる-「マーケティング」という言葉を使わない

最も望ましくないことは、「ABMはマーケティングチームがリードするもの」だと営業チームが感じることです。成功の秘訣は、営業チームがABMを自分たちの戦略として捉え、マーケティングチームはその促進活動をすると考えることです。

この課題の解決方法はいくつもあります。例えばこれをABMと呼ばないことです!IT大手のOracleでは、ABMを「アカウントベース戦略」または省略して「アカウントベース」と呼びます。これに見習い、私たちCylinder BBNは、社内では「アカウントベースドエンゲージメント」と呼ぶことにしました。

もう1つの重要なことは、ABMへの移行を進める前に、社内で最も優秀かつ影響力のある営業マンたちにABMの手法を受け入れてもらうことです。そのためには、営業マン向けにセミナーや研修を行い、アカウントベースのアプローチによる現実的な利点を理解してもらい、新しいスタイルでの役割を納得してもらうことがベストです。

2) 小規模で始めてスケールアップする

最初からABMを広範囲に実施することは危険です。BtoBの世界では営業が強く、マーケティングはそのサポート的役割と誤解されていることもあります。営業から認められるのは簡単ではありません。小さな成功事例を狙い、1つの地域や市場に焦点を当てること、複数のチームではなく優秀な1つの営業チームと連携すること、さらに、ターゲットアカウントと接触する際は、「最も購入する可能性の高い顧客」に合わせてコンテンツをパーソナライズすることが重要です。

例えば購入決定者がCIOである可能性もあります。この場合、その企業のキーマンはCIOであるので、CIO以外のバイヤージャーニーを作成し統合するという作業は省けます。そのため最初は、「正真正銘のABMキャンペーン」の条件をすべて満たしていないかもしれませんが、とにかく開始し、問題点や検討事項を明確にすることで、スケールアップする前に、アイデアを洗練させることができます。

そして、先見の明のある営業マンたちの協力を得ながら開始すれば、彼らは自分たちがABMキャンペーンに最初から参加できたことに喜びを感じ、成果を得るための投資や今後の運用に協力的になります。

3) 明確な見込み額を設定する

このブログ冒頭で述べたCEOは、マーケティングチームのレベルアップを強く望んでいたと同時にこの追加投資がどのような形で結果に結び付くかを理解したいと考えていました。

理解するためのベストな方法は、主なバイヤージャーニーを各フェーズで分け、ジャーニーに沿ったタッチポイントごとにABM活動から期待できる利益を見積もることです。

たとえば、認知フェーズでは、パーソナライズされたeメールマーケティングが、通常のeメール一斉配信よりも5〜10%成果が高いという結果を示しており、エンゲージメント(顧客または見込み客の購買傾向基準の1つ)向上につながります。

他には、「行き詰まった」ポイントで取引を成功させるために設計されたABM戦略もまた、営業サイクルを大幅に短縮できることが確認されています。このようにABM活動によって獲得できる体系的な洞察力や改善点を合計すれば、ABM変革に必要な投資額を大幅に上回るでしょう。

このように、最初の1年でABMがもたらす可能性のある影響を、経営陣だけでなく営業チームやマーケティングチームにも理解してもらうことが最重要事項です。ただし、奇跡は期待すべきではありませんね。

新しい顧客の場合、また営業サイクルが長い場合は、最初の1年くらいは結果を期待できないかもしれません。ABMは関係性をベースにしたものであり、関係性の構築には時間がかかるためです。

既存顧客の方が、他よりも早く結果が出るかもしれません。ただし、ほとんどスタートさえできない取引のスタート地点でリードの創出を続けることに比べれば、ABMは、はるかに優れた投資だということは断言できます。(実際、調査会社のTOPOによると、マーケティングチームが100人のMQLを創出しても、営業チームに受け入れられるのは10人のみであり、さらに取引につながるのは100人中1人未満だということです)。

ここで私がクライアントにお勧めしていることをご紹介します。「あなたの会社が使用するABMの成功評価基準が必ずターゲットとのエンゲージメントに反映されるようにしてください。」

例えば、時間と共にエンゲージメントがどのように増加したか(タッチポイント、会社のコンテンツ閲覧に費やした時間、または対面するイベントに参加した時間が増加したなど)を示し、さらにそのエンゲージメントの増加分と、「購買傾向」(この言葉については次のブログで詳細を説明します)が上がった分を結びつけてください。

4) ターゲットアカウントリストを理解する

これは何度も耳にする話でしょうが、ターゲットアカウントリストの構築(営業チームが所有し、マーケティングチームが促進するプロセス)は、一朝一夕にできることではありません。時間をかけて理想の顧客像(ICP)にぴったりのアカウントを見つけ、そのアカウントについてアカウントエグゼクティブ(AE)と話し、ターゲットアカウントリストに載せるべきだと確信しなければなりません。

AEは、それほど相応しくないアカウントもリストに載せようとすることがよくあります。そして気を付けていないと本線から外れた議論を始めます。さらに、マーケティングチームがリード中心からアカウントベースに移行すると、複数のAEがこのリードを自分のものにしようとしてゴチャゴチャになり、営業マネージャーでなければ収められない状態になることがあります。

重要なことは、議論が始まる前に自分がどんな課題に直面しているかを理解することです。そうすれば、マーケティングチームが最初のターゲットリストやICPにあてはまる「条件」を準備し、AEと個別に連携して取り組むことができます。少なくとも営業のチーム全体とゼロから一緒に始めるよりは有意義でしょう。

この難解なプロセスは、外部のマーケティングチームおよび営業に精通したファシリテーター(各専門分野の専門家)の協力を得ると成果が上がると思います。

5) ABMに飛びつかないこと

ここまでで、ABMへの変更決定をして、会社のCRMに合ったABMプラットフォームや追加のツールに急いで投資しようと思った方もいるかもしれませんが、それは絶対にやめてください。可能であれば、スプレッドシートを使って、会社のABMパイロットプロジェクトのプロセスとデータを処理してみてください。

スプレッドシートを使えば、あなたのチームは、どの活動とどのプロセスが関連していて、実行可能であるかを把握することができます。これがクリアになると、今度は基本的なABMテクノロジーを導入し、プロセスの各パートを測定したり、慣れてきたらさらに高度な機能へ移行したりすることができます。

上記プロセスはABM変革プロジェクトを始める際は必ず通る道です。そのガイドとして、ABM成熟モデルを構築することは大変有益です。

これら5つのポイントがABM変換のすべてをカバーしているわけではありませんが、理想の結果を達成するのに必ず役立ちます。追加のヒントが欲しいとき、またはABMプロジェクトの詳細について相談したいときには、BBNグループにご連絡ください。

これはcylindr BBNの記事を翻訳し掲載しているものです。

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