差別用語のない広告コンテンツを書くためのヒント

2019年10月8日

グローバル化が進む中、世の中は多様な文化やライフスタイルに対して敏感になってきています。そこで今日は、あなたのコンテンツが他人を傷つけないようにするためのヒント及び警告を提供したいと思います。特に今回は性別、人種、及び性的指向について触れます。

コンテンツによってたった一人を傷つけたことで、数億円をかけたマーケティングキャンペーンが崩壊する場合があります。時代は変化しており、中でも21世紀の文化を象徴する変化が「差別用語を使わないこと」という意味の「ポリティカルコレクトネス」(以下「ポリコレ」)です。

もしあなたがコピーライター、または通信業界にいる場合、世間の人は、「あなたが何を書いたか」よりも、「正確かつ適切な言葉で書かれているか」に注目します。つまり、一般の人よりもあなたの言葉の選択には影響力があるということです。

コピーライターがキャンペーンを台無しにするケース

例えば、あなたの会社は今、カタログを制作、またはソーシャルメディアのキャンペーンを行い、製品に関する深いストーリーを紹介しようとしています。努力の末、あなたは素晴らしいアイディアを思いつき、その骨組みも作りました。しかし、あなたが選んだ文言の一部、または画像が、故意ではなかったのですが、人種差別、性差別、あるいは同性愛嫌悪と受け取られる可能性があったことに気づいていませんでした。ここであなたもあなたの会社のキャンペーンも万事休すです。

こういったケースは頻繁に起こります。特に多くの言語、文化、及び歴史が存在するマーケットにおいて製品を浸透または機能させようとする場合は多く見られます。

コピーライターの責務は、クライアントの広告内容を理解し、ターゲットオーディエンスに注目してもらえるユニークなコピーを作ることです。しかしこれに加えて、クライアント企業に対し、そのマーケットの広告で起こり得る差別用語について通知することもコピーライターの責任です。

実例

キャチコピーの中に差別用語が含まれていることは多々あります。以下がその例です。

  • ある会社は、「アジア料理」をイメージさせる食器類を販売するため、一人の男の子の写真を使おうとしていました。それは、東アジア出身と思われる男の子がどんぶりに入った麺類をすすりながら食べている画像でした。欧米諸国は、「アジア料理」は、アジアの国や文化ごとに異なり、多様であることを忘れがちです。韓国のソウルで食べられている料理が、インドのダージリンでも食べられているわけではありません。さらに、この男の子のモデルもウィスコンシン州のマディソン出身かもしれません。
  • ある会社は、「私たちの北京オフィスで働く中国人の従業員はみんな働き者です」という文言を使おうとしていました。しかしこの表現には、「中国人は他の人より多く働かされる」または「中国人以外の従業員は働き者ではない」という意味が含まれる可能性があります。
  • また別の会社では、プレスリリースにおいて、卸売業者の製品が高品質だったことに対し「嬉しい驚きを感じた」と伝えようとしていましたが、以下のような文章が含まれていました。「最初は、〇〇(国名)製だったので、品質が悪いのではないかと思っていました。」

いずれの会社も、対象の人たちを称賛しようとしていました。しかし、これらのメッセージは削除されました。もしこれらを変更していなかったら、そのブランドのイメージは悪いものになっていたでしょう。

差別用語を避けるためのヒント

基本的に、見込み客を傷つけるくらいなら、用心し過ぎるくらい用心した方がよいでしょう。ポリコレを守れないということはクライアント企業の出費にもつながります。そこで、以下のヒントを役立てて、ポリコレの警告に気づくようにしてください。

女性蔑視と性差別

Two light switch figures depicting two genders, one with breasts, the other with a penis depicting female and male genders respectively

女性蔑視と性差別はさまざまな形で表現されますが、最も強い手段が言葉です。その言葉の概念ができ、広まるためです。

例えば、マーケティングメッセージのシナリオにおいて「彼女」や「彼」という言葉を使うことを問題視しない人もいると思います。しかし、これらを使うことで、ほとんどのオーディエンスに逃げられてしまう可能性があります。また「男性の看護師」などをメッセージに使うのも間違いです。男性の看護師も女性の看護師も「看護師」です。これによって傷ついた人たちは、その会社の製品を二度と買う気にはならないでしょう。

性差を表した言葉が無意識に読者を傷つけてしまうケースは数えきれないほどありますので、できる限り性差を表した言葉を回避することがベストです。教員やジャーナリストは、性の区別のある代名詞を使う上でのスタイルガイドをそれぞれ持っています。しかしマーケティングのコピーライターの場合は、性差別の境界線が曖昧です。念のためにいうと、性差別語とは、不必要に性別を特定する言葉のことです。

性差別語を避けるためには、以下のヒントを検討してください。

  • 「マン」の代わりに「パーソン」を使う。例えば、「ビジネスマン」ではなく「ビジネスパーソン」など。
  • できる限り代名詞を使わない
  • 代名詞を避けるのが難しい場合は、複数形を使って性別をはっきりさせない。例えば「彼はノートをクラスに持って来なければならない」ではなく「生徒全員がノートをクラスに持って来なければならない」など。
  • 家庭内の役割を性別で決めるような固定概念を普及させない、強調しない、または使用しない。

人種差別と文化の盗用

Three women standing together of different racial background

人種を表す方法は、非常に重要です。人種は、政治、文化、及び日常生活に影響を及ぼす社会的構成概念です。しかし常に「明確な」手段で表現されているとは限りません。時には、誰もが同じ肌の色という前提で、製品を「皮膚」や「裸」の色で表す無頓着なものもあります。

3年前、私は複数の文化と民族が入り混じるアメリカフロリダ州から単一民族のデンマークに引っ越しました。その時に気づいたのは、この国ではさまざまな人種との交流がほとんどないということでした。世の中には人種差別として受け取られるメッセージがあることなど考えもしない人がいるというのも理解できます。

また別の例として、北欧の人たちがコスチュームまたはその他の民族衣装や王位の象徴など(アフリカ系アメリカ人のアフロヘア、ネイティブアメリカンの頭飾りなど)を身にまとうイベントを見たことがあります。彼らは、このようなファッションを使って文化を称賛しようとしているだけでした。ただし、これが「文化の盗用」になるとは認識していなかったのです。

文化の盗用とは、ある文化圏の要素を他の文化圏の人が流用・利用することです。特に優勢な国民文化の人が少数民族の文化要素を流用すると問題は大きくなります。もちろんデンマークには、アメリカのように複雑で複数の文化の歴史はありませんが、多国籍企業がマーケティングを行うなら、やはり注意をしなくてはなりません。

あなたのコピーに文化的要素を入れる場合、その前に以下を宿題としてやってみてください。

  • 文化的集団、文化的要素、運動の歴史についてできるだけ学ぶ
  • 使用する文化に敬意を払う
  • 少数民族を「飾り」のように使わない。「成熟した地位」として使う
  • 少数民族の特徴または文化的要素のうわべだけを飾らない
  • 登場人物の肌の色や民族性を強調しない。特にその人の特徴とは関係ない場合は注意する

性的指向

Close up of blue eyes with rainbow paint on face synonymous with LGBTQ movement

多くのコピーライターは、コピーに登場する人物を白人男性と想定しがちですが、同時に異性愛者であると想定します。

残念ながら、2010年代にも同性愛嫌悪の言葉は普及しています。レズビアン、ゲイ、及びバイセクシャルの若者の99%は、軽蔑的に「めちゃくちゃゲイだな」「お前は本当にゲイだな」などと学校で言われるそうです。言うまでもなく、このような人を傷つける言葉は教室でも広告業界でもNGです。

コピーライターは、従来受け入れられてこなかった性的指向の人たちを傷つける可能性のある言葉から、クライアント企業を遠ざけなければなりません。そうすることで、コピーライターは、性的指向を問わず、皆さんに安全な世界を作ることができるとともに、クライアント企業に彼らのマーケットについて理解してもらえます。例えば、約4分の1のアメリカ人(24%)は、LGBTQフレンドリーとして知られている企業の方がビジネスを行う可能性が高いと発表しています。

つまり、一部の会社はすでに、公然とLGBTQコミュニティを支持しているのです。またアメリカ人の約半分(46%)は、「同性愛者のカップルが広告に使われていても製品購入には影響がない」と答えており、またそういう広告の方がよい影響があるという人もいます。実際にいくつかの消費者グループ(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、自由主義者、千年至福説信奉者、高額所得者)は、LGBTQフレンドリーの会社によりお金を投じると発表しています。

正しいコピーライターになること。ターゲットマーケットを学ぶこと

次の広告戦略を固めて、記事の編集に入る前に、是非ターゲットマーケットについて深く分析してみてください。正確さと品位を持ってアイディアをまとめることは、ライターの得意分野です。ポリコレでつまずくべきではありません。実際、ポリコレをきちんと理解していれば、自分のスキルや理解の範囲も広がり、最終的にはメッセージの伝達方法もレベルアップします。グローバル化が進む中、他人を傷つけないようにすることがコピーライターの基本だというのも当然だと思います。

ポリコレについてはそれぞれ感じることがあると思いますが、あなたが社会問題を解決し、人を傷つける文言を修正すべきだ、という話ではありません。オーディエンスを正しい方向に導くコンテンツ作りに目を向けてくださいということです。オーディエンスの感受性を含み、メッセージがどのように受け取られるかを予測してください。ライターである以上、進化を続ける世界の最新の状況を常に把握し、クライアント企業がその顧客や市場を理解するよう手助けをしなければなりません。

これはインパクトMが所属するBBNの、Buzz Magazineの記事を翻訳し掲載しているものです。

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